はじめに
農村地域の魚類の象徴である「メダカ」が環境庁のレッドリストで絶滅の恐れのある魚(絶滅危惧種U類)に指定されたことにより、県内でも保護活動が活発になってきました。そこで県内で活動している団体、個人及びこれから活動していこうと考えている方々のために、専門家の意見を基にこれを作り、今後の活動の共通認識としたいと考えました。

1.生息地の保全について
メダカが生息しているということは、その場所が豊な自然環境を有しており、多様な水生生物が共存していることを示しています。その環境を保全し、メダカをはじめとする生物がこれから先も生息し続けるようにしてあげることが最も重要です。保護活動の第一歩は生息地の調査活動です。状況に変化があったり、その恐れがある場合は速やかに関係者及び団体と連絡をとり、対策を講じましょう。

2.捕獲について
1の「生息地の保全」で述べたように、メダカの保護活動の目的は生息地の保全です。捕獲は行わないことを原則としますが、次の場合は専門家と相談して捕獲を検討しましょう。
(1) 開発などのために生息地が失われる場合、又は一時的避難が必要な場合。
(2) 生息地の環境(水質、水量など)が年々悪化し、放置しておくと絶滅の危険性が高いと予測される場合
(3) その他、特別な理由により必要が生じた場合(遺伝学的に貴重など)

3.飼育と繁殖について
捕獲したメダカを飼育したり繁殖させたりする場合は次の点に留意しましょう。
(1) メダカは生息地ごとに遺伝子の組成が違っていることが考えられます。捕獲したメダカは生息地ごとに水槽などを分けて飼育し、間違っても他の生息地のメダカや、購入したメダカと混じらないように注意しましょう。
(2) 少ない数の親を基に繁殖を続けると、近親交配の弊害(奇形率の上昇、精子の運動能力の低下、病気に対する抵抗性の低下など)が起きることが考えられます。同じ生息地のメダカを飼育している人の間で魚を交換して産卵させたり、元の生息地が数多くいる場合は、年に数匹で良いので捕獲して産卵に加わらせたほうが良いでしょう。

4.飼育個体の譲渡について
飼育個体を他の人や団体に譲渡する場合は、譲渡した年月日、譲渡先の名前(あるいは名称)と連絡先、譲渡したメダカの生息地名・匹数・魚の年齢・繁殖させた世代数(元の親から何代目の魚か)、をわかる範囲で記録にとどめておきましょう。

5.飼育個体の放流について
「水槽の環境(水温、餌、天敵など)」は元の生息地の環境と違います。そのため、水槽で繁殖を続けているうちに元の生息地であれば卵や稚魚の段階で死んでしまう魚が生き残ったり、生き残るはずの魚が死んでしまったりして、遺伝子組成が変化してしまうことが考えられます。このような魚を元の生息地に放流すると、その生息地の遺伝子組成を変化させてしまいます。元の生息地のメダカやその子供であっても、原則的に飼育個体は放流しないこととしますが、次のような場合は専門家と相談して放流を検討しましょう。
(1) 元の生息地のメダカが絶滅したか、著しく少なくなって絶滅寸前の場合
(2) かつて生息していた場所に放流してメダカを復活させる場合

6.その他
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